産婦人科お産について

安全に帝王切開を少なく
痛みは最小限に

当院が最も重視していることは「安全」です。産科における安全提供とは、母子ともに元気に自宅に帰れるよう手助けすることです。分娩は母子ともに命がけです。何の前触れもなく、しかも急激に、母子ともに危険な状態に陥ることもあるのです(現在の日本でも10万人中5人くらいが分娩の前後に亡くなっています)。このような緊急事態にも、しっかり対応できるシステムを構築する事に我々は努力を惜しみません。

これには、助産師、産科医および小児科医の増員と個々の能力向上に加え、緊急時に備えたプロトコールの作成と訓練、迅速な輸血と手術準備、正確な胎児診断、ガイドラインを軸とする診療方針、また、この体制を24時間維持することが不可欠であり、これらを充実させることに力を入れています。そして「地域の中核病院との良好な関係」、「新生児科医/麻酔科医との連携」といった円滑な地域協力体制の構築も重視しております。 中でも特に強化しているのは、お産の最前線に立つ「助産師の教育」です。具体的には助産師には医師と同様の知識と判断力を求め、年2回の院内評価や症例検討などを通じて、個々の実力向上とチームの方針の浸透を図っています。また助産師外来においても母体と胎児の健康確認が行えるようなに超音波検査などのトレーニングを積んでいます。

また、「安全の重視」に加えて「分娩停止による帝王切開を避けること」も大切に考えて、積極的に医療(陣痛促進剤、人工破膜など)を入れる方針をとっています。さらに、「胎児奇形スクリーニング」を行うことで、出生直後から厳重管理が必要な疾患を可能な限り出生前に検出して、適切な管理が受けられる施設へご紹介しています。

  • 124時間対応の無痛分娩

    基本的には24時間、無痛分娩に対応いたします。陣痛発来後もしくは破水後にご来院頂きまして硬膜外麻酔用チューブを挿入いたします。

  • 2痛みはゼロを目指す

    痛みを全部取り除くことを目指した管理を行う方針です。

  • 3痛みが辛くなった時点で開始

    痛みが辛くなった時点から麻酔薬注入を開始し、子宮口が開く前からも積極的に痛みをとっていく方針です。そして子宮口が3〜4cm開大を目安に麻酔薬を持続的に使用し痛みをコントロールいたします。なるべくすべての痛みをとるよう麻酔薬追加を行っておりますが、腰と肛門の痛みが残る場合があります。また、押されるような感じは残ります。

  • 4計画分娩について

    計画分娩も行っております。経産婦さん(お産が2回目以降の方)には計画分娩もご案内しております。経産婦さんは、お産の進行が早く無痛分娩が間に合わない可能性があるためです。赤ちゃんの呼吸の問題なども考慮し、妊娠38週以降で計画しております。計画分娩のデメリットとしては、計画通りお産が進まない場合があります。お産になるまで何日かかかったり、一旦退院となる場合もあります。なお、初産婦さんは自然陣痛を待ったほうが順調に進行するため、計画分娩は医学的理由以外では薦めておりません。

  • 5合併症とその対応について

無痛分娩の比較的軽度の合併症
微弱陣痛
麻酔薬を使うことで陣痛が弱くなります。多くの場合、子宮収縮剤による陣痛促進が必要となります。なお微弱陣痛を主な理由とする吸引・鉗子分娩の頻度が約2倍高くなります(2016年度当院データより)。
頭痛・しびれなどがしばらく残ることがあります。
無痛分娩の重大な合併症
麻酔薬のくも膜下腔への迷入
硬膜外腔より麻酔が広がりやすく、呼吸停止、血圧低下などにつながる場合があります。早期発見し呼吸を補助することによって、呼吸停止による低酸素脳症を防ぐことができます
麻酔薬の血管内迷入
局所麻酔中毒、重症になるとけいれん、呼吸停止、心停止を引き起こす場合があります。このような症状が起こる前に院内に常備してある脂肪製剤点滴により局所麻酔薬の血中濃度を低下させることができます
アナフィラキシーショック
重症のアレルギーで呼吸困難、血圧低下を引き起こす場合があります。救急カートに常備してあるアドレナリンを使用することで対応が可能です。

このように命にかかわるような合併症もあります。これらは、どんな達人が行ってもある一定の確率で起こるため早期発見し重症化を防ぐことが大切です。「重症化前にある自覚症状を早期確認する」「厳格なモニター」(合併症を早く見つける観察)と「早期対応」により重大な状況を防ぐことが可能です。

医療に100%はありません。しかし100%に近づけるよう安全確保の仕組み構築とスタッフ教育に努めております。